今日はひな祭りをもっと楽しむための、ひな人形にまつわるアレコレのお話です。
●総勢15人が揃うひな人形。それぞれどんな人?
→まず、一番上の2人。内裏雛といいます。
ひなまつりの歌で「お内裏様とお雛様~♪」という歌詞がありますが、「内裏」とは、そもそも皇居・宮中のことを指します。
そして「お内裏様」といえば、天皇様を親しんで呼ぶ言い方です。
それぞれを個別に呼ぶなら「男雛・女雛」
もしくは「お殿様・お雛様」という言い方もあります。
このことから、実はひな人形は天皇・皇后の結婚式を表していることがわかりますね。
次に三人官女。
三段飾りのひな人形でもこの三人官女までは一緒にいるので、目にすることも耳にすることも多いですね。
この三人官女は、いわゆるお姫様のお付きの人です。
ただ身の回りの世話をするだけでなく、お姫様の教育係も担う、今でいえばバリバリのキャリアウーマンです。
また、真ん中の座っている方だけ、他の2人とは違い、既婚の年長の女性です。
3人の中でのリーダー的存在ですね。
お人形をよく見ると、この真ん中のお人形だけ眉を剃り、お歯黒をしています。
それが昔の既婚女性の証になります。
そして残り2人の並べ方にも見分け方があります。
実は前に出ている足の向きが外になる向きに配置するのが正解となります。
機会があれば、観察してみてくださいね。
次は賑やかな雰囲気の五人囃子。
結婚式というおめでたい席を音楽で盛り上げる役目を担っています。
五人囃子は元服という成人の儀式を行う前の少年たちで構成されていて、髪型もまだマゲを結わず、おかっぱ頭です。
ひな人形を正面から見て、右から
「謡(うたい)」「笛」「小鼓(こつづみ)」「大鼓(おおつづみ)」
「太鼓(たいこ)」の順番に並んでいます。
謡は手に扇子を持ち、いわゆるボーカル担当。
笛が唯一のメロディーを奏で、他3人は打楽器担当になります。
並び順は「右から左へ音や楽器が大きくなっていく」と覚えます。
4段目に飾る随身(ずいじん)は、雛祭りの歌に出てくる右大臣と左大臣のこと。
いわゆるボディーガードの役割を担っています。
本来は、上の段の三人官女や五人囃子よりも、身分が高い人物ですが結婚式の場ということで4段目に位置しています。
ちなみに、お殿様から見ての右大臣・左大臣になるので、正面から見ると飾る位置は逆になります。
向かって右が左大臣の年配の男性、左が右大臣の若い男性のお人形になります。
最後は仕丁(しちょう、じちょう)の3人。
ひな祭りの歌にも出て来ないので、影は薄いかもしれませんが、怒ったり、泣いたり、笑ったり、の表情豊かで愛嬌のあるお人形です。
彼らは実は、いわゆる庶民の雑用係で、ボランティアで宮中で働いています。
手には傘や掃除道具を持ち、外出の準備や宮中の掃除をする役割があります。
彼らのように表情豊かな子に育ちますように、という願いが込められているそうです。
●ひな人形が天皇・皇后の結婚式を表す理由は?
→明治時代以降にひな人形の文化は庶民にまで広まったと言われていますが、なぜ天皇・皇后の結婚式を表すようになったかと言うと、皇后さまのように自分の娘も良縁に巡り合えますように、という願いが込められています。
●内裏雛の並べ方について
→一番上の内裏雛ふたりの並べ方、一般的にはお殿様が正面から見て左、お雛様が右側ですね。
でも、これが逆になるパターンも実はあります。
現在では男女の並び方は、結婚式でもわかる通り、男性が女性に対して右側、女性が左側です。
しかし大正時代までは反対でした。
古来より日本では中国の文化を取り入れており、中国では左側(向かって右)が上座として序列が決まっていました。
ところが明治以降日本も西洋化が進み、大正天皇が公式の席で反対に位置され、昭和天皇の即位から正式に西洋式の並び方に変わりました。
関東の人形屋はこれに習い西洋式に並び方を変えましたが、京都では日本の伝統を重んじて変えなかったようです。
そこで二通りの並び方が存在するようになりました。
ですので、いわゆる京雛と呼ばれるものは並び方が反対になることもあります。
「ひな人形」の種類と選び方①
●ひな人形の種類
→ひな人形と一口に言っても、いろいろなタイプのお人形があります。
ひな人形選びに何を基準に選んだらよいのか苦労されている方も
多いと思いますので、それぞれの種類を長所・短所をまじえてご案内します。
まずは、飾り方の違いで見ていきます。
①七段飾り
親王(お内裏様・お雛様)、三人官女、五人囃子、随身(ずいじん)←右大臣&左大臣、仕丁(してい)、総勢十五人が揃った豪華な雛人形です。
今では七段飾りはだいぶ少なくなりましたが、やはりお雛様と言えばコレ!もっとも華やかで豪華ですね。
お子様が大きくなれば、一緒に飾る楽しさもあります。
とはいえ、最大の短所は、なんといっても場所をとります。
飾る時はもちろん、収納時も押入れひとつを余裕で占領します。
また、飾るのにも収納するにも時間がかかりますので、毎年しっかり飾る自信のある方でないと、
ちょっともったいないかもしれないですね。
②三段飾り
七段飾りを簡素化した、親王、三人官女の5人で飾る三段のお雛様です。
七段に比べて飾り付け、収納が楽になりますし、見た目の豪華さ、飾り付けの楽しさも残しています。
しかし、七段飾りほどではありませんが、想像以上に飾る場所、収納の場所は必要になります。
③三段飾り(収納タイプ)
三段飾りの中でも、収納タイプと言って、飾り台の部分が収納箱として利用でき、お人形やお道具を全てしまうことが出来るものもあり、最近では人気があります。
ただ、ものによってはコンパクトに収めるためにお人形やお道具も少し小さめの作りになっていることも。
お人形やお道具の豪華さを求めるのであれば、三段飾りでも収納タイプではなく、普通の段飾りを。
④親王飾り(平飾り)
三段飾りをさらに簡素化したもので、平台一段のお雛様。
その名の通り、お内裏様とお雛様2人だけで、小さめのお道具が付きます。
飾る手間も少なく、何より省スペースなのがメリットです。
全体の大きさ、見栄えなどは段飾りよりは劣りますが、
親王飾りはお人形が2人だけなので、お人形も大きく、しっかりした作りをしているものが多いですね。
アパートやマンションにお住まいの方にはオススメ。
ただ、飾る楽しさや豪華さを求める場合は段飾りにしましょう。
⑤ケース飾り
ケースの中にお人形やその他のお道具が全て収まっているお雛様です。
箱から出してそのままで飾り付けも完了で、ほこりも気になりません。
あとはお子様が小さいうちは、お人形に触って壊してしまう…なんてところからも守れるかもしれません。
もちろん省スペースでお飾りいただけますが、しまう時もそのままの大きさなので、思ったより収納場所は必要です。
今ではケースもアクリルケースが多くなっていますが、ガラスケースの場合は取扱いに注意しましょう。
「ひな人形」の種類と選び方②
⑥立ち雛
一般的には座っているお雛様が多いのですが、立ち雛はその名の通り、立った姿勢のお雛様です。
ひな人形の由来である流し雛などは、紙で作った人形を使っていたわけで、そもそも立ち雛がルーツなのです。
立ち雛は一般的に親王飾りなので、飾るスペースもとりませんが、立っているので高さがあり、存在感もあります。
シンプルで趣深さが味わえるので、大人の方に比較的人気がありますね。
例えば、長女には段飾り、次女には立ち雛、なんていうのもアリかもしれません。
⑦木目込み人形
木目込み人形は、木でできた胴体に彫った溝に布地の端を埋め込んで、衣裳を着せたように見せるお人形です。
埋め込むことを「きめこむ」とも言ったことから、木目込み人形と呼ばれるようになりました。
木目込み人形の一番の特徴は、お顔のかわいらしさです。
一般的な雛人形は、シュッとした美男・美女なお顔をしていますが、木目込み人形は、ふくよかなお顔で見る人の気持ちを和ませてくれます。
比較的小さい雛人形が多く、飾り場所や収納スペースが気になりません。
衣裳も型崩れしにくく、非常に長持ちします。
持ち道具が雛人形に取り付いているため、飾り付けや片付けがとても楽なのも特徴です。
お子様から大人まで楽しめるお人形ですね。
●人形選びのポイントは?
→いろいろな種類のひな人形をご紹介しましたが、やはり一番のポイントは「長く飾れること」ではないでしょうか。
せっかくいいひな人形を買っても、出さずにしまいっ放しではもったいないですね。
①予算を決めましょう
ひな人形は種類も豊富ですし、値段もピンからキリまで様々です。
おじいちゃん・おばあちゃんから出資してもらう方も
多いかと思いますが、ある程度の予算を決めておいたほうが選ぶ上でも的を絞りやすくなりますね。
②スペースに合うものを選ぶ
天井が高くて、広いスペースをとったお店で見ていると
そんなに大きくないように見えますが、実際家に飾ると大きさの感覚がかなり違います。
最近では、一戸建てでも和室がないお家もありますし、飾る場所を決めて、あらかじめ寸法を測っておいたほうが無難です。
収納場所の確保も忘れずに。
③優先順位を決めましょう
お人形を選ぶにあたって、何を重視するかを決めておくと、悩んだ時の決定打になります。
優先順位が、全体的な豪華さなのか、スペースを取らないものなのか、お人形のお顔や衣裳なのか、予算なのか…など。
全ての条件が揃えば一番なのですが、それもなかなか難しいものです。
優先順位をしっかりしておくと、スムーズにお買い物できます。
④何軒かお店を見て見比べましょう
お子様にとっては一生に一度のお人形です。
高い買い物でもありますし、慎重に選びたいですね。
値段や品質、その他のサービスなどを含めて、何軒かお店を見比べて、納得いくお買い物を。
金額に関しては、値引き率に惑わされずに、実際の購入金額で比較しましょう。
⑤最終的にはママが気に入ったものを毎年、飾りつけるのはおそらくママのお仕事。
ひな人形の飾り付け、片付けは想像以上に手間がかかります。
女の子のお道具でもありますし、ママの気に入ったものを優先し、毎年楽しく飾れるものを選びましょう。
●お姉ちゃんのお人形があれば妹の分は必要ない?
→ひな人形は女の子ひとりにひとつ準備します。
よく「ママのひな人形があるから譲る」とか「お姉ちゃんの時に買ったので」というお話を聞きます。でも、本来ひな人形はひとりにひとつ必要なものなのです。
なぜかというと、人形はその子の魔除けのお守りの役割をしますので、子供に譲ったり、姉妹で共有するものではなく、一人にひとつが本来の在り方です。
とはいえ、アパート住まいの方も多い現代では、なかなか買っても飾る場所がなかったりしてお子様一人にひとつ用意できない場合もあるかと思います。
その場合は、小さめのケース人形や、お子様の名前の入った名前旗だけでもご準備いただけると、お子様自身も自分だけのものという印象が強まりますね。
その他にも、つるし雛なども華やかで人気がありますよ。
せっかくのお祝いですので、楽しいひな祭りにしたいですね。
●いつ頃出して、いつまでに片付ける?
→ひな人形を飾る時期としては、立春(2/4頃)から2月中旬にかけてがよいと言われています。
「節分で豆まきをして厄を払ったあとに飾る」という流れで覚えておくといいと思います。
遅くても、2月下旬、桃の節句の1週間前までには飾りましょう。
ただ、この日に飾るという絶対的な決まりがある訳ではありませんので、長く飾っておきたいという場合は、年明け頃から飾っても問題はありません。
そして、しまう時期についてですが、「片付けるのが遅いと婚期が遅れる」なんてよく言いますね。
これは言ってしまえば迷信ではありますが、「大事なお人形の片付けを後回しにしてしまうようでは、素敵なお嫁さんになれないよ」という
教育的な意味が込められているのだと思います。